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asumism

あすみん(@an_asumin)のブログやで

3Dプリンタでモデルガンを作ったぽよ - AMT Backup

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攻殻機動隊ARISEで草薙素子が使用する銃のモデルガンを3Dプリンタで作ったお話その2

“その他”の拳銃

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私はときどき草薙素子になります.手にはDetonics Pocket 9という実在する銃のお手製モデルガンを持っているぽよ.Detonics Pocket 9は攻殻機動隊ARISEの一作目であるborder:1 Ghost Painに登場するキーアイテム的な銃で,事件の真相を知った草薙素子が燃え上がる汚れた金に投げ棄てることでその役目を終えます.


http://www.imfdb.org/images/thumb/c/c0/GITSA_GW_07.jpg/800px-GITSA_GW_07.jpg
border:3 Ghost Tearsでは草薙素子がかつてカルディス独立軍の英雄スクラサスとして活動していた際の特別な銃を再び握ることになるのですが,その他のストーリーであるborder:2 Ghost Whispersおよびborder:4 Ghost Stands AloneではAMT Backupという実在の銃を握っています.おそらく草薙素子が日常的に所持している銃なのでしょう.スライドやマガジンのエクステンションがめっつぁかっちょいいのですが,モデルガンとしては現在市販されていないようです.ないなら作りたい!飽きたらない私は,このAMT Backupのモデルガンを3Dプリンタで作ってみることにしたぽよ!

AMT Backup製作工程

資料集め

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実物を見ることはそうそう出来ないので,参考となる資料をインターネットで検索します.形状を見るとAMT Backupのシングルアクションオンリーモデルで間違いないのですが,口径がわかりませんでした.装弾数から判断すると.22LRなのかなと思ったのですが,スライドストップなどの演出も加えられていた*1ので,そこまで特定することは止めて,最もメジャーであると思われる.380ACPのモデルを参考にして作製することにしたぽよ*2

モデリング

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モデリングにはFusion360を使います.三面図として参照できそうな画像を実物に近いスケールで配置して,それらを参考にスケッチを起こしていきます.写真を参照するのでディティールが気になってしまいますが,いきなり作りこむとあとで大変なことになるので,スケッチの段階では概観だけに注目します.


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スライドの初期段階のスケッチはこんなものだったりします.


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押し出したり丸めたりして形にしていきます.


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他のパーツと合わせてみて“らしさ”が出てるかチェックします.「それっぽいぞ!!」とココロの中で叫び,精神衛生を保ちながらひらめきと根性で進めていきます…….


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最終的に,モデルが完成したぽよ!モデルガンとして見た目に強く影響しそうな部分や,機構を持たせる部分はパーツを切り分けて作成しています.ただし,キルゾーンに踏み込む*3訳にはいかないので,銃としての内部の機構は一切作りこんでいません.加えて,バレルは完全に塞ぎ,トリガはフレームと一体にするなどの措置を取っています*4


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Fusion360にはレンダリング機能もあるので,マテリアルを設定してレイトレーサにがんばってもらいました.ここまでいくと満足感があるぽよ!といってもここまでが下準備なのですけどね!

出力

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私のお部屋にはボンサイラボのBS01ちゃんがいるので,この子に出力してもらうぽよ!

銃本体

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フィラメントにはProto-PastaStainlessSteelPLAを使います.これは金属粉を混ぜ込んだプラスチック*5のフィラメントで,造形物に金属のような光沢や重量感を与えることが出来ます*6.モデルガンの界隈でいうところのヘビーウェイト樹脂に近いかもしれませんね.プラスチックなので模擬拳銃の要件を満たすことはありません.
ということで早速造形したかったのですが,調子に乗って多めに発注したらめっちょデカいスプールで届いてしまって,ホルダーに引っかかりませんでした…….


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スプールホルダーを作るところから開始するぽよ!こちらはThingiverseで公開されているモデルを使わせていただきました.


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上手くはまりました.スプールが水平にクルクル回るようになったのでこれで造形が出来るぽよ!


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造形したてのフレームの一部です.造形したては金属のような石のような独特の質感です.これを磨いていくと,ギラギラのステンレス!とはいきませんが,金属のような光沢が現れます.ちなみにinfillは100%*7にして出力しているので,これだけで相当な重量感があるぽよ.


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いい感じのスライス設定を見つけながら出力してパーツを揃えていくのですが,徐々に上手く造形できなくなってしまいました.点検したところ,ドライブロール*8の溝がすべて摩耗してしまっていました.私が使っていたBS01の旧型フィーダー*9はフィラメントを噛む力が一定な上,本来は単純なプラスチックのフィラメントを噛ませるところに金属粉入りの硬いフィラメントを噛ませていたので已む無しかな,といったところです.後々,フィラメントを噛む力を段階的に変更できる新型フィーダーに換装するに至るのですが,この時点ではとりあえずドライブロールのみを換装して,すべての造形を終わらせることにしました.造形できたパーツはリューターや紙やすり,コンパウンドを使って順に磨いていきます.


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マガジンラッチ*10が最も小さなパーツですね.これくらいになると熱溶解積層法の特性と十分に向き合う必要が出てくる感じがあるぽよ.


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グリップは単純なABSで造型します.Slic3r*11の場合,Top/bottom fill patternにHilbert Curveを選択すると,表面に独特な模様をつけることが出来るぽよ.


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非均一な色合いの塗装を施して木材っぽくします*12.ちなみに表面はクリアでコーティングしてあります.

弾丸

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ハリボテの銃に合うハリボテの弾丸も作るぽよ!フィラメントはColorFabbBrassFillCopperFillを使用します.これらも金属粉入りのフィラメントですが,硬く脆いStainlessSteelPLAに対して,ぐにゃぐにゃとよく曲がるのが印象的です.いささかドライブロールにやさしいかも知れませんね.


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.380ACP弾を参考に,ちゃっちゃとモデリングして10発ほど造形してみました.なんだかめっつぁかわいいんですけど,銃弾っぽさがあんまりなくて焦るぽよ!!!


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接着して削って磨いてDetonics Pocket 9の近くにそっと置いてみた.少しそれっぽくなりましたね.安心したぽよ.

組み立て

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基本的にはパーツ同士がしっかりはまって動くようになるまで削って調整すれば組み立て可能なのですが,パーツを支えるスプリングの存在を無視する訳にはいきません.スプリングを3Dプリンタで作ってみたら面白いかもと考えたのですが,そもそもがプラスチックなので大して縮まない割に場所をとるので使えないという結果になってしまったぽよ.


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既成のスプリングをポチることも考えたのですが,作ってみるのも悪くないかなと思って,試しにピアノ線から作ってみることにしたぽよ.治具*133Dプリンタで作って,がんばってピアノ線を巻き付けることでスプリングにするぽよ.本当のスプリングは複雑な焼きの工程があるけど,巻きつけただけでもそれなりにスプリングの動きをしてくれるのでとりあえずはこれでいいかな!


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マガジンラッチ用のスプリングはそこらへんにあった細い金属棒に巻きつけて作るぽよ.実物のマガジンラッチはハンマスプリングの力を借りて動くようだけど,そもそもハンマもストラットもオミットされているので,実物とは違う形式のスプリングをこっそり仕込むぽよ.

完成

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すべて組み立てた状態がこれ!実は少し大きめに造形してあります.AMT Backupは結構小振りな拳銃なのですが,存在感を出すために劇中ではかなり大ぶりに描かれているので,それに合わせた形です.造形サイズの許す限り好きなスケールで出力できるのも3Dプリンタの魅力のひとつだね.ちなみに,手に取るとかなりずっしりとした重量感を楽しめます.バレルを塞いだ関係で重心がやや前方に寄っているのが欠点かもねぎ.


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スライドを引くことが出来ます.スプリングは強くないので片手で保持できなくもない.ピンなどは通っていませんが,実物のようにスライドを引いた状態でボルトを押し出すことで,分解してリコイルロッドを取り出すことなどが可能です.ちなみにセーフティはパーツを分けて作っているので動かそうと思ったら動かせそうです.


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ラッチを後退させることでマガジンを引き出すことが出来ます.マガジンは実物に近いパーツ構成なので,フロアプレートを押し上げエクステンションを前方にスライドさせることで分解し,スプリングやフォロワーを取り出すことが出来ます.


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マガジンにはスプリングが入っているので,フォロワーを押し下げながら弾丸をつめることができます*14.ギミックが楽しい感じに仕上がったぽよね〜!

作ってみてどうよ

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Fusion360を触って初めに作ったのが今回のモデルであることや,初めて特殊なフィラメントを使って造形したことを考えるとまずまずのものが出来上がったと思うぽよ.本来ステンレスで出来ているものをプラスチックで作るので,最低限必要な厚みを考慮してデザインに反映させたりするセンスを磨かないといけないといけないなと感じたよ.それと,画像だけを頼りにスケッチを描いていくと,組み立てたり可動させる部分の整合性を保つのが案外難しかったりする.フィラメントの風合いは実物に忠実って訳ではないけれど,使い込まれたような重厚感があるので結構気に入ってたりする.造形が上手くいかなかった部分の粗がやや目立つので,改善できそうならリベンジしてみたいものだね.金属粉入りフィラメントは熱溶解積層法の3Dプリンタで作ったとは思えない質感を生むので,他の特殊なフィラメントも積極的に使ってみたいぽよ!物騒なモノはしばらく作るつもりないけどね!

*1:border:4 Ghost Stands Alone参照

*2:.22LRと.380ACPは全長が変わらないみたい

*3:映画イノセンス草薙素子のセリフ参照

*4:他にも簡単のためアーチハウジングと呼ばれるグリップセーフティをフレームと一体にしていたりします

*5:ポリ乳酸

*6:強度はベースのプラスチックよりも下がります

*7:中身が最大限つまっているということ.最後までチョコたっぷり

*8:フィラメントを噛んで送り出すギヤのようなパーツ

*9:フィラメントを送り出す機構

*10:マガジンをフレーム内に留めておく引っかかり

*11:スライサソフトのひとつで,3Dモデルから3Dプリンタを動かすコードを生成する

*12:参考にしたグリップが木目のない感じだったのでそれに従ったけど,もう少し木材っぽくする技法を身に付けたいよ……

*13:左側がマガジンスプリング用,右側がリコイルスプリング用

*14:無論それ以上は何も出来ませんよ!